[ No.1]

ふれあい市(1)

交流を通じて築く、都市と農村が支え合う関係

「産直」という言葉からイメージされるのは「新鮮」「ふるさと」といったキーワードであろう。農林水産物をめぐる流通において「産直」は今や日常化し、百貨店やスーパーでの産地直送大量仕入れ等も含めて多様な形態が存在している。今回の特集テーマとしてとり上げた「ふれあい市」とは、生産者自らが消費者と対面しながら販売する定期的に開かれている市(いち)を総称したものである。「産直」の一形態ではあるが、「売る・買う」という経済的な関係にとどまらず、そこには、農産物を通じて人と人とがつながる「ふれあい」というキーワードが欠かせない要素として内包されている。
 ここに報告する美山町と精華町での「ふれあい市」の取り組みは、地域をとりまく環境の違いから当然スタイルの異なったものとなっているが、活動を通して農業や暮らしのあり方に変化がみられること、さらには都市と農村の人たちがお互いに理解し支え合う関係を築きつつあるという点で共通している。京都の塾運動がめざしている都市と農村との交流・共生につなげていく展望をもった、地域での具体的な実践の一つである。

(文:京都塾アドバイザー 高橋光雅)

美山町大野地区

■町のイメージを売るダム湖畔の青空市場

 京都市から車を走らせること1時間余り、和知町から由良川に沿うように曲がりくねった府道を進むと、やがて大野ダムの堰堤が見えてくる。ダム湖周辺が公園として整備されており、その一角にある『美山の健康野菜 青空市場』と看板を掲げた小屋の前には5〜6台の車が停められていた。10月半ば、秋晴れの日曜日の朝10時前である。小屋の中の平台に菊菜・ホウレンソウ・ナスビ・生姜・ピーマンなどの野菜のほか、地鶏卵・かしわや自家製のこんにゃく・つけもの・草餅・松茸めしも並べられ、軒先に置かれたコンテナには白菜・キャベツ・里芋・甘藷・カボチャなどが盛られている。20〜30種類はあろうか、家族連れの人たちがそれらを取り囲むように品物を選んだり、販売している農家の人と談笑したりしている。

■繰り返し訪れる都市住民

小寺
美山町 小寺さん
「茅葺きの里に行く途中です」「美山に遊びに来ました」「近くでキャンプをしているんで材料を買いに来ました」「別荘に泊りに来た帰りです」――ほとんどの人たちが京都及び阪神地域の都市住民である。青空市が開かれている大野ダム公園は釣りやボート遊びなどの行楽拠点となっているが、美山町の西の玄関口でもあり、町を訪れる人たちの通り道となっているため立ち寄る人は絶えない。しかし、通り掛かりの人だけでなく常連客も多いと言う。「毎週のように来て1週間分の野菜を買うていかはる人もいます。そういう顔なじみの人も多く、来る時に手土産を持ってきてくれるんですワ。年賀状をもらっている人も20人近くはいます」と語るのは、この青空市を開催している大野青空市場生産組合のリーダーである小寺久和さん。京都市から約60km、大阪や神戸からだと100km近く離れた美山町まで野菜を買いに来るというのは一体なぜなのか。そんな驚きと疑問を抱きながら小寺さんの話に耳を傾けた。

■自分たちのつけた値段で自分たちが売る

青空市
「これどうやって食べたらいいの?」
かるく言葉が交わされる
 青空市がスタートする発端となったのは、美山町が『村おこし元年』と位置づけた平成元年である。その年、『村おこし課』を設置した町行政は、都市住民との交流拠点となる『自然文化村河鹿荘』を建設するとともに五つの旧村単位に『村おこし推進委員会』を組織し、地域住民主体の村おこし運動を展開する体制を整えた。そして大野地区村おこし推進委員会の下につくられた農林部会の野菜生産グループで検討されたのが青空市であった。「自分たちが作った物に、自分たちで値段をつけて、自分たちで売る。これがやりたかったんです」と小寺さん。メンバー20名が不安な気持ちでスタートした平成3年は、台風による野菜不足も手伝ってか予想の2倍以上の売上げがあった。2年目の平成4年には生産組合を設立し、青空市の開催も隔週から毎週日曜日へと回数を増やした。青空市の影響は大きく、自家用に作っていても余れば捨てるしかなかった野菜が売れたという喜びは、地域での生産意欲を刺激した。そして6年目を迎えた現在、組合員数は40名まで増加したが、売れ残りが多くなっても困るため、加入後2年間は出荷を制限される準組合員制度を採用している。組合員が出荷する種類や量は自由だが、いつ何を出せばよく売れるのかを考えながら計画的に栽培するといったような工夫がみられるようになってきたという。

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