[ No.3]

農業、生活の基盤と村人の誇りを築く(1)

―老若男女が主役となる楽しいむらづくり―

 舞鶴市与保呂地区は、同市の南東に位置する人口500人(世帯数100戸)足らずの小さな村だ。この村では、10年近くにわたり、子供、老人、女性、青年を主人公にして、伝統行事の復活や村人同士の交流などに取り組んできた。こうした活動を通じて、農地と水辺環境の整備、地域の環境や景観を活かす美しいむらづくりがすすんでいる。「舞鶴一の住みよい、お互いに誇りのもてる与保呂」(「与保呂21世紀計画」)が着実に実現しつつある。
 あくまで「住みよい地域」にこだわった与保呂地区の取り組みは決して派手ではない。だが、そのことが、与保呂地区の個性を際だたせている。

(文:京都塾アドバイザー 高橋光雅)

 JR小浜線の高架事業に伴なって市街地整備が進められつつある東舞鶴駅周辺、その工事現場脇から府道舞鶴和知線を南に向かう。そのまま進むと菅坂峠を経て綾部市の中上林に至るルートであるが、途中から左折し、与保呂川に沿って市道を東に走る。東舞鶴駅から約10分、この春開通する舞鶴自動車道の橋脚をくぐり抜けたあたりから与保呂地区に入る。
 舞鶴市与保呂地区は旧与保呂村の常・木ノ下・与保呂という三字の一つで、100戸余り、約450人が住む農村地域である。三方を山林に囲まれた谷合いの地形で、地区中央を与保呂川と市道が縦貫し、その両側の緩やかな斜面上に田畑と集落が続く。最奥部の正面には舞鶴市と綾部市を隔てる養老山、三国岳の山並みがそびえ立ち、車で通り抜けることはできない。その麓に舞鶴市民が口にする上水道の水源池と浄水場がある。静かで、水と緑に恵まれた美しい山里の村である。

■村づくりのきっかけは話し合いから

石束
石束輝己さん
 与保呂地区で“楽しい村づくり”の取り組みが開始されたのは昭和63年、10年前のことである。その中心となって動いてきたリーダーの一人、石束輝己さんが当時の村の状況を次のように話してくれた。
「農家の高齢化と担い手不足が進む中、圃場整備の賛否をめぐって村が二分されていた。将来に希望が持てない農業に投資することに躊躇する人たちと、人手不足を解消するにも機械すら入らない土地条件に焦りを感じる人たち――村の中での人間関係もギスギスしてきて、人づくりの必要性を痛感してたんです」
 与保呂地区でも、通勤などで村を留守にする人が7〜8割を占めてきていた。稲作やハウスイチゴ等の農業を中心にして支えてきた地域経済の弱体化に伴なって、村人たちの気持ちがバラバラになってゆくのが何よりも懸念された。
 石束さんや、農事組合の役員をしていた団野誠さんたちの呼びかけによって、『村づくり懇談会』が初めて開催されたのが昭和63年9月。話し合いが積み重ねられる中、舞鶴農業改良普及センターの助言もあって、京都府から『集落話し合い運動推進事業』による活動費助成を受けることになる。農事組合のほか、区会(自治会)・婦人会・子供愛護会などの団体も加わって、活動に弾みがついた。
◎環境点検ウォッチング――村外から嫁いできた女性たちは村のことを意外と知らない。男性にしても、用もないのに村中を歩き回る機会は少ない。
◎子供の作文募集――子供たちの新鮮な目で見た与保呂の姿が浮き彫りになった。
◎与保呂川を堰き止めての魚つかみ大会――みんなで遊び興じた。
虫おくり
虫おくりの復活 みんなでやる楽しさが、村
人の心をひとつにしていった
◎「稲の虫おくり」と花見の復活――「稲の虫おくり」は害虫退治の行事で40年ぶりの復活となった。久しぶりの花見には、一人暮らしの老人を水源池まで車に乗せて行って「もう見ることはないと思ってたのに」と喜ばれた。
◎作品展――絵画、工作など村人が自慢の手づくり作品をもちよった。村人たちの隠れた才能が見えてきた。
 昭和63年から平成2年の3年間、話し合いに加えて、このような取り組みが重ねられた。

■共同する楽しさが村人の心を一つに

「遊び心に、火がついたんですワ」と笑う石束さんの話によると、村のリーダー層のほとんどが戦後の青年団活動の中心を担ってきた人たちであるという。かつては与保呂地区が有する財産区林の手入れのため、年4回の総出作業があり、それに関連した花見や祭りも盛んだったとか。それがだんだん途絶えがちになってきていた。
 潜んでいた“共同の力”を蘇らせるきっかけとなった『村づくり懇談会』――「話し合いをし、改めて地域に目を向けることで、みんなの気持ちが一つになってきた」と石束さん。その結果として、平成3年度から圃場整備事業も始まった。

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