[ No.3]

農業、生活の基盤と村人の誇りを築く(2)

■外からの評価と学習の積み重ね

 与保呂地区の人たちが動き始めたころ、その後の村づくりに大きな影響を与える一つの出会いがあった。農水省農業工学研究所(農工研)集落整備計画研究室長の筒井義冨さんと主任研究員の山本徳司さんである。
 初めて与保呂地区を訪れた筒井さんは「都市近郊にもかかわらず農村風景が残されている。山も整備されている。商業用看板がなく、空缶も落ちていない」と、与保呂の景観を賞賛した。そして与保呂地区が農工研の研究対象となるとともに、農工研スタッフによる村づくりの指導が始まる。
 集落環境学習会/景観・環境に対する意識調査/合成写真による与保呂の景観シミュレーション/景観学習会/環境点検ウォッチングと点検地図づくり/集落ビジョン学習会/村づくり学習会などが、平成3〜4年度の2年間にわたって繰り返し実施された。
「ずっと、テストされてる感じでした」と振り返る石束さん。押し掛け的にやって来る農工研スタッフとその指導に対する村人たちの戸惑いは想像に難くない。しかし結果的にみると、外からの評価と学習の積み重ねを通じて、与保呂の良さに自信を持つと同時に、暮らしの環境・村の景観を守っていくことの大切さを知る絶好のトレーニングであったことも確かである。
 このようにして、与保呂地区での村づくりの活動にはっきりとした道筋がつけられることになる。

■改善への取り組みからビジョンづくりへ

ガリバーマップ
私たちが考えた与保呂
〜ガリバーマップの説明〜
 2年間のトレーニングの中で見え始めてきた与保呂のイメージと環境の問題点――それらを土台にして村づくり活動が本格的に動き出そうとした時、推進体制の再編強化が課題となった。
「それまで区長が責任者として活動の中心にいたが、仕事が集中しすぎるんです。各団体が仕事を分担する体制がどうしても必要だった」と石束さんが語る。圃場整備組合や消防団、小・中学校育友会、寿会(老人会)のほか大正琴の会といった趣味の会などを新たに加え、地区内の16団体によって構成される『与保呂楽しい村づくり推進委員会』が平成5年4月に結成された。石束さんが推進委員長に就き、各団体から選出された38人の委員が、伝承部会・環境景観部会・イベント部会に分かれて活動の中心を担うことになった。
 環境・景観部会では、与保呂川を美しくするための取り組みとして、与保呂川の水辺ウォッチングと水質調査、暮らしの点検調査(全世帯へのアンケート)などを実施した上で、「五つの約束ごと」を決定。家庭でのゴミと排水など暮らしのなかから見直していこうと提起。
 埋もれた文化遺産や伝統産業の発見・復活を担当する伝承部会は、与保呂の景観写真展と四季カレンダーの作成、郷土史誌発刊をめざした歴史年表の作成、さらには炭焼き窯の復活も実現させた。
 イベント部会は、定着した花見大会・稲の虫送りや祭礼・盆踊り、作品展など村の行事に新しい趣向を盛り込んで、村人全員が参加できる、文字通り楽しい村づくりに大きく貢献した。
 また『推進委員会』でも、月1回位のペースで『与保呂だより』を発行して、これらの活動を村中に知らせるとともに、これまでの学習や実践活動を通じて模索してきた与保呂の将来図づくりにも着手。そして平成7年3月には、一つの到達段階としてまとめられた『水とやすらぎの里づくり――与保呂21世紀計画』と題した冊子を発行することとなった。

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