[ No.5]
【共生への一歩】

農村振興にデザイン力を

黒竹節人

黒竹節人
(くろたけ さだと)
(株)くろちく取締役(京都塾アドバイザー)

 自然発生的に生まれてきた村落の伝統的な景観や、文化の優れた遺産がスプロール化によって破壊され、無秩序になり魅力を失っている。そんな現状を古い城下町 (例えば江戸) のように都市のデザインを計画的にすすめることによって魅力あるものに再構築する。これはデザインである。その時代時代を振り返ると当時の繁栄の様子や、価値観、作法などは、デザインによって伝えられている。現代では町を近代化させてみたり、懐古調にしてみたり、繁栄を目的とした町並みのデザインの形は様々である。歴史的背景、風土、土壌など、デザインを施すにあたっては対象物をいろいろな角度から見つめることになる。そして一つの方向を決めてデザインを施していくのである。
 均一化されたボーダーレスな世の中では、デザイン力が非常に大切なものになってくる。絵を描く、色をつけるのだけがデザインではない。都市を村をデザインすることも可能なのである。
 そもそも繁栄は継続の上に成り立つものだ。一つの文化を繁栄させるためにはそれを継続していくデザイン力が必要なのだと思う。伝統あるものをそのままの姿で残し次代へ伝えていく方法もあるが、新しい何かを加えたりして、生きたままの姿で伝承していく方法もある。都市においても農村においても、継続の上に成り立つ文化を考えなければと思う。農村振興においては諸々の問題があり、並々ならぬ努力が必要であると考えるが、実質ネガティブ思考の上での発想として、歴史を無視し新しく流行りのものを取り入れポジティブに見せようとしても、流行りというものは廃れる。それを見越してのデザインであれば構わないが、農村振興においては主旨は違っているだろう。いつまでも生きている姿であればいつまでも新鮮である。飽くことのない良いもの即ち伝統・歴史・風土・土壌それらが農村にはあるのだから、デザインするにあたっては本当に素晴らしい素材である。この素材に色や形を加えることによって、人々に光るものを観せることができるだろう。そして、時代が変わっても常に新鮮なものを提供することができる。恵まれた環境を担い手が大切に継承していきながらも、夢を持って取り組めるような都市との共生のかたち。農村の文化に地殻変動を起こし、継続されいくかたち。
 そのかたち作りに、デザインをすることに、少しでも力になることができればと思う。それはとても大切なことだと思うから。

■プロフィール
1947年生まれ。都市環境デザインの専門家。とくに伝統建築物に詳しく、古材を使った建築や京都の町屋の再生などに取り組み、観光化事業に実績をもつ。

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