[ No.6]
【共生への一歩】

郷土料理に情報と技術を添えて

藤本正信

藤本正信
(ふじもと まさのぶ)
(有)エッペンドルフ取締役(京都塾アドバイザー)

 特産物の販売、地元農産物を使ったレストランをはじめとした観光施設、また農村と都市との交流を図るための農業体験コーナーなどを合わせ持つ施設が各地に誕生しています。
 そこでは郷土料理と呼ばれるその地域固有の“伝統食”は都市からの来訪者にとっての大きな魅力の一つだと思います。
 郷土料理とは「その地方で収穫された食材を中心として、その土地の雰囲気、色彩が反映された伝承料理」とでも言うことが出来るでしょうか。
 この郷土料理という響きは《自然・健康・安全》を唱えながらも、一方で簡単便利に向かっている現代日本の食生活の中で失われつつある、少し昔のバランスの取れた日本型の食生活を思い起こさせてくれます。
 日本の食文化の根底に位置する郷土料理はこれからも決して失われてはならないと思いますし、また地方の人達にはそれを継承し、都会の人々に紹介する使命のようなものがあると思います。
 ただ、日々変化を続ける“食”に対する人々の感覚、食材の種類、量、保存方法など昔と大きく異なる現在に郷土料理を昔ながらの調理法で伝えられるままに復活して普及させることは非常に難しいと思われます。
 その地方で穫れた食材をお客様の要望に調和させながらどのような形に表現し、提供するのか、そしてビジネスとして成り立つための生産、調理、販売等の地域経営システムをどう作り上げるかが大切と思われます。
 郷土料理を見直すと言うことは単なる懐古趣味に終わるのではなく、地域のレストランで伝統の料理を食べていただき、なおかつその料理を安心してお持ち帰りいただけるような商品に仕上げてみるのも一つの方法ではないでしょうか。もちろんそのためには厨房設備の見直し、新しい調理技術の習得など新たな努力の必要は言うまでもありませんが、電子レンジなどに対応した商品作りや、これからの日本の食料事情をも視野に入れて継続して取り組んで行かなければならないのではないでしょうか。
 「温故知新」《論語》の原文には「故きを温ねて新しきを知れば、以って師たるべし」と有ります。現代版「郷土料理」では伝承された料理の知恵と技術を現代の調理科学、理論に照らして分析、再評価し新たな商品に仕上げ、更にその地域の歴史、食材の機能的役割、商品の成分表示等の情報を添え、日常の料理ではあっても生活の豊かさを感じられる料理(商品)として具現することが求められています。こうした現代版「郷土料理」による“食”を通しての日常的な交流が農村と都市との新たな関係を築き上げる事に繋がると思っております。

■プロフィール
1950年生まれ。フードコーディネーター。高温高圧真空調理法という技術を通して、地域食材の個性、特徴を生かしたメニューの提案や保存、流通販売を前提とした調理食品の開発、調理技術指導などで活躍。

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