[ No.10]

その1 大宮町 常吉村営百貨店(2)

農協に代わる生活の拠点に
依託販売の年収30万円も

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「お店が近くにほしい」と訴えた児童の絵。店の奥に張ってある

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常吉村営百貨店前で、大木満和社長(左)と廣野幸生・村づくり委員会代表
 百貨店の内容は、別項の概要を見て頂くとして、設立に至った一つのきっかけは、地域の子どもたちを集めて開いた寺子屋でした。常吉にあればいいな、と思う夢を描いてもらった中に5、6年生の児童9人が合作した「田舎ランド計画」がありました。水族館、ジェットコースターと並んで、おもちゃ屋や文房具店、アイスクリーム屋など。なにしろ、村内には商店は一軒もなく、ちょっとした買い物をするにも自転車で往復40分。百貨店設立と同じ97年12月にやっと水道が通るまで、山から引いた水や井戸水に頼る中山間地でした。農協の広域合併で、それまで生活拠点だった支所を失うことになり、地域の人たちは、日々の暮らしを脅かされ途方にくれるありさま。そんな中、「農協が出て行くのなら、地域ぐるみ手づくりで新しく作ればいい」という声が。95年から取り組んできた集落の村づくり運動が芽を吹き出したのでしょう、禍を福に転じて逆境をはね返そうという声が。

 うぶ声をあげた村営百貨店は大好評で迎えられました。陳列だなや冷凍ケース、商品ケースは京都市内のスーパー改装で出た中古品を譲り受けたものでした。一般食料・雑貨や営農資材のほかに、地域の農家が持ち込む野菜や加工品を委託販売する方法を採っています。来る者は拒まず。140戸550人、高齢化率29・8%の常吉地区で、農家80人が村営百貨店と取引を持ち、うち60人は老人。支払いリストによると、年間20〜30万円の収入を得ている人が目につきます。ハクサイを持ってきた嘉一さんも稼ぎ頭のひとり。

 「旬の野菜がかち合う時期を避けて、品薄の頃合いをよく心得ている」と、村営百貨店社長の大木満和さん(54)、村づくり委員会代表の廣野幸生さん(50)は感心しています。朝からテレビにひたり、昼からはゲートボールという老人たちでしたが「百貨店に持ち込めば売れる」が刺激になって、生き甲斐のある生活へ奮い立たせている様子。農業をする楽しみ、百貨店へ持って行く楽しみ、売れる楽しみ、お金がもらえる楽しみ、お金を遣う楽しみ…お金が集落を循環するようになったのです。スーパーなどより値段が安く新鮮とあって、通勤の行き帰りに立ち寄っていく他町の人もあり、嘉一さんのハクサイも売れ行き上々でした。地区内には、独り暮らしの老人が十数人おり、パートの安味肇子さんらが毎朝、「元気にしとんなるかいな」と電話でご機嫌を伺いつつ、御用聞きをするのも日課。注文を聞いて宅配を続けています。

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